ザッケローニ SAMURAI BLUE監督手記 イル ミオ ジャッポーネ“私の日本”

vol.262013.6.12 UP DATE「アリガトウゴザイマシタ」

6月4日のオーストラリア戦でワールドカップ出場を決めたことは私の人生の中でも大きな出来事になりました。とてもうれしく思いますし、私を日本代表の監督として招き入れ、ワールドカップへの扉を開く機会を作ってくれた日本サッカー協会に改めて感謝の気持ちを捧げたいと思います。また、確実に強くたくましくなってくれた選手、そんな選手の育成に携わってきたJクラブを始めとする日本中のコーチの皆さん、陰ながらチームを支えてくれたスタッフ全員にも、この場を借りてお礼を述べたいと思います。

抱擁を交わしたい選手はオーストラリア戦のメンバーだけにとどまりません。これまで代表に呼んだ選手全員を抱きしめたいですね。チームを一番強くするのは何と言っても選手同士の競い合う心。これまで呼んだ選手は誰もがエゴを出すことなくチームの「和」を大切にしてくれました。その上で前向きな姿勢でポジション争いをしてくれました。サッカーという競技はとにかく選手が主役です。選手なしでは監督やスタッフ、フロントがいくら頑張ったところでゲームはまったく成り立ちませんし、勝利を手繰り寄せることもできません。今の日本代表は激しく競争しながら相互の信頼関係も強い、本当に素晴らしいメンバーだと思っています。

今回の予選突破を振り返ると、代表チームの背中を押し続けてくれたサポーターのパワーにも思いが至ります。日本で試合をするときは「これこそ本当のホームだ」といつも感激します。テストマッチのブルガリア戦に0―2で敗れたときも豊田スタジアムに駆けつけたサポーターは選手に罵声ではなく励ましの声をかけてくれた。あれは選手たちを本当に申し訳ない気持ちにさせましたし、オーストラリア戦に向けて大きな発奮材料になりました。

4日の埼玉スタジアムの雰囲気も最高で選手を強力にプッシュしてくれました。サポーターのことをサッカー界ではよく「12番目の選手」と言いますが、私は日本代表については「12番目」「13番目」「14番目」の選手だと感じています。11人対11人で戦うのがサッカーという競技ですが、どうもホームで戦うときの日本代表は14人対11人で戦っているような心地になります。それくらいのアドバンテージをわれわれにもたらしてくれている。そんなサポーターとW杯出場の喜びを分かち合えたこと。これは私の監督人生の中で一生の宝物です。本当にアリガトウゴザイマシタ。

W杯出場を決めた今、次なる目標はこのチームを世界中のどこと対戦しても伍して戦えるようにすることです。出場を決めた後に私は「世界を驚かす」と発言しましたが、これについてはワールドカップ優勝とか具体的なターゲットがあるわけではありません。私はヨーロッパから来た人間だから分かるのですが、彼の地の人たちはサッカーは自分たちのものであり、自分たちが築いた地位はある種の〝帝国〟のように崩れないものだと過信しています。しかし、私はそうは思いません。この世に不変のものなどないというのが私の信条です。ヨーロッパはアジアをサッカー後進国だと思っていますが、アジアも日本のサッカーも着実に成長を続けている。私が「世界を驚かす」というとき、それは「ヨーロッパや南米と同じレベルまで、われわれが来ていることを示す」ということです。結果だけではなく、内容でも世界の強豪と五分の勝負を演じる。それがまさに世界を驚かすことになると思うのです。

6月15日に開幕するコンフェデレーションズカップはその手始めになります。1年後の本大会をにらめば、チームは様々な形を持っていないといけません。パスを多くしてボール・ポゼッションを高め、いいコンビネーションで相手を崩すのはわれわれの持ち味ですが、この先はもう少し手数をかけない攻めの形も構築しないといけない。相手が守備を整える前にゴールに向かう姿勢が必要になってくるでしょう。ワールドカップ本番でいい戦いをするためにコンフェデレーションズカップが絶好のテストの場になるのは間違いありません。自分たちがどこにいるのかを確認し、ワールドカップまでに何をすべきかが分かる絶好の場になります。自分は結果を約束するタイプの監督ではないので、ピッチの上で選手が全力を尽くして戦ってくれることは皆さんに約束したいと思います。

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