SAMURAI BLUE(日本代表)岡田武史監督インタビュー

 

「選手たちの意識はものすごく高い。その状態を保ってくれれば」

 

 2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカの開幕まで約4カ月と迫り、SAMURAI BLUE(日本代表)の強化にも拍車がかかる。本大会のグループステージで対戦するのは、いずれ劣らぬ強豪ばかり。だが、就任以来2年が経過した岡田武史監督は、これまでつくり上げてきたチームに全幅の信頼を寄せ、その方針はいささかもぶれることはない。ベースとなる力を上げることを目指す一連の試合を前に、今後の強化の流れ、「キリンチャレンジカップ2010」ベネズエラ戦の狙いなどを聞いた。(このインタビューは2010年1月13日に実施しました)

 

■今後の強化の流れ

 

——FIFAワールドカップイヤーの2010年が明けました。2~3月にかけて、キリンチャレンジカップ2010のベネズエラ戦、東アジアサッカー選手権2010 決勝大会の中国戦、香港戦、韓国戦、AFCアジアカップ2011カタール 予選のバーレーン戦と続きます。この間の強化の流れを教えてください。

岡田 目指す方向性は決まっているので、自分たちのサッカーについてベースを上げることに尽きます。現状ではまだ、FIFAワールドカップで対戦する相手を想定し、細かいポイントを絞った強化をすることはありません。また、2月の試合には国外でプレーする選手を呼べないので、国内でプレーする選手にチャンスを与えることができます。今回は、現在の日本代表でプレー経験が少ない選手も何名か呼んでいます。彼らが練習の中でどのようなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみです。場合によっては、2~3月の試合で実際に起用することもあると考えています。

——3月3日のバーレーン戦を終えると、Jリーグが開幕します。その後の強化スケジュールはどうなっているのでしょうか。

岡田 Jリーグが開幕した後も、1カ月に一度は集まる予定です。4月7日にはキリンチャレンジカップ2010を戦います。この試合は方向性の確認、おさらい的な要素が強い試合になります。Jリーグが中断となる5月17日以降には、選手たちに5日間ぐらい完全休養を与えたいと思っています。その後、集合して、5月24日には壮行試合に当たるキリンチャレンジカップ2010を戦い、最初のキャンプ地であるスイスに向かいます。

——スイスでのキャンプから、本大会に至る流れはどうなるのでしょうか。

岡田 スイスに行ってからも、強化試合を予定しています。FIFAワールドカップでわれわれの初戦となる6月14日のカメルーン戦の約1週間ぐらい前に、南アフリカのベースキャンプ地であるジョージに移動したいと考えています。

——初戦が行われるブルームフォンテーンは、約1400メートルの高地です。対策については、どのように考えていますか。

岡田 スイスのキャンプ地は、約1800メートルの高地です。そこに2週間ほど滞在するので、高地に順応することができます。しかし、高地でキャンプをするとなかなか疲労が回復しないので、激しいトレーニングができません。ですから、スイスから一度、ジョージに移動します。カメルーン戦が行われるブルームフォンテーンには、試合の2日前に移動する予定です。

 

■ポイントを絞るのは5月

 

——FIFAワールドカップ開幕まで、4カ月余りとなりました。現段階で日本代表の選手たちに、どういう心構え、コンディションであってほしいですか。岡田監督にとって、決戦を4カ月後に控えた理想のチーム像、選手像はありますか。

岡田 選手たちには、昨年末にまた手紙を書きました。目標を達成するためにやるべきことは何か、オフの間に取り組むべきことは何か。これは今に始まったことではなく、ずっと言い続けていることです。選手たちはすでに分かってくれており、実行しているので、普通の状態であってくれればいいのです。今の日本代表の選手たちの意識は、ものすごく高い。そのままの状態を保ってくれれば、何の問題もありません。

——FIFAワールドカップで対戦する相手が実際に決まったことで、岡田監督に心境の変化などはありましたか。

岡田 特にないですよ。どんな相手であれ、勝つために自分たちのサッカーをしっかりやらないといけないことに変わりはないですから。これは、オランダ、ガーナと対戦した昨年9月の欧州遠征が終わったときに、確認できていることです。以前から「世界の強豪と呼ばれる国々に勝つには、こうしないといけない」という話はしてきました。それが「本当だった」ということを、再確認できています。だから、これまで取り組んできたことを続けていくだけです。対戦相手が決まったからといって、特に何かが変わることはありません。

——目指すサッカーをベースアップすることにプラスして、対戦相手を見据えてのポイントを絞った強化は行わないのでしょうか。

岡田 細かくポイントを絞った強化は、5月に入ってからで十分だと考えています。オランダ、デンマークを想定した欧州の組織的なチーム、カメルーンを想定したアフリカのチームと強化試合を行う予定です。

——キリンチャレンジカップ2010のベネズエラ戦は、どのようなメンバーで戦うことになるのでしょうか。

岡田 今のところ、国内組のベストメンバーで戦うつもりです。年明けの(AFCアジアカップ2011 カタール 予選の)イエメン戦に続いて新しい選手を何名か選んでいますが、試合に起用するかどうかは練習でのパフォーマンスを見て決めます。FIFAワールドカップまで、もうそんなに時間がないので、今後は新しい選手をテストするための試合はありません。いかにチームのベースを上げられるかが、重要なポイントになってきます。

——国内組の主力選手が集まって、2010年の最初の試合になります。選手たちにどのようなパフォーマンスを求めていますか。

岡田 もちろん、まずは勝利することです。それ以上に、今までやってきたサッカー、パス&ムーブ、素早い攻守の切り替え、クロスボールを狙うポジションなどのテーマにどれだけ取り組めるかを確認したいですね。日本代表から離れて、各選手はそれぞれのクラブでプレーしていました。そうなると、どうしてもちょっと忘れ気味になることもある。そうではなく、「いやいや、忘れてないよ」という、日本代表に存在するベースの力を見せてくれたらうれしいですね。そういった意味で、わたしの考えではベネズエラ戦は復習、おさらいという位置付けになります。

 

■先が見える戦いで勝つ

 

——これまでは、少し期間が空いて試合をすると、苦戦することもありましたね。

岡田 今はもう、パッと集まって試合をやっても、けっこう戦える状態になっています。選手たちが高い意識を持って取り組んできてくれたおかげで、かなりチームが固まってきています。監督としては、これは非常に心強い。ある程度の形ができているので、今から新しいものをつくり上げるとか、そういう考えはまったくありません。

——対戦するベネズエラのサッカーについては、どのような印象がありますか。

岡田 FIFAワールドカップ南米予選の最終戦でブラジルと対戦し、いい戦いをして0-0で引き分けています。ただ、このときのブラジルは、すでに本大会出場を決めていたという事情もあります。結局、ベネズエラは南米予選で10チーム中8位でした。この順位に実力が出ていると思います。メンバーに関しては、国内でプレーする選手が多く、30代後半の若い監督が指揮しています。ベネズエラ代表をつくり変えるべく、新しい選手を招集しているという情報もあります。チャンスを得た選手が高いモチベーションを持って来日してくれたらうれしいですね。

——1月6日に行われたイエメン戦で活躍した選手も何名か選出しましたが、ベネズエラ戦に起用する考えはありますか。

岡田 先ほども言ったとおり、まずは練習でのパフォーマンスを見ます。しかし、FIFAワールドカップでベスト4に入るという意識を持って取り組んでいる選手と、日本代表に呼ばれて試合に出たいと考える選手では、やはり練習への取り組み方、雰囲気がぜんぜん違います。これに関しては、われわれはずっと日本代表を見てきたので、イエメン戦に臨むメンバーを集めたときに、正直、びっくりしました。「あれ、こんなに差があるのか」と。それでスタッフと話し合ったら、彼らの意識が低いのではなく、今の日本代表の選手たちの意識が上がってきたんじゃないかという結論になったのです。イエメン戦を経て今回のベネズエラ戦に呼ばれた選手は、そういう意識の差が感じられると思うので、楽しみですね。

——ベネズエラ戦は大分の九州石油ドームで開催されます。スタジアムへ観戦に来てくださるファン・サポーターの皆さんにメッセージをお願いします。

岡田 昨年、われわれは大分で試合をすることができませんでした。しかし、FIFAワールドカップが開催される2010年の最初のホームゲームを大分で戦うことになりました。日本代表が持つ、しっかりとしたベースの力を、ファン・サポーターの皆さんにお見せしたいと考えています。FIFAワールドカップ本大会につながるような、先が見える戦いをして勝ちたいと思っていますので、ぜひ応援をよろしくお願いします。

 

 

上記内容は「キリンチャレンジカップ2010SAMURAI BLUE対ベネズエラ代表戦」公式プログラムに掲載されています。その他にも選手情報や対戦国情報等が載っている大会公式プログラムを是非ご覧になって下さい!

 

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