ワールドカップ大会を前に調整中の日本代表は、5月30日、オーストリア・グラーツでイングランドと国際親善を行い、前半早々にDF闘莉王のゴールでリードを奪いながらも後半2つのオウンゴールを献上。GK川島永嗣が好セーブでPKを阻止するなど健闘を見せたが、2-1で逆転負けした。

 

 セルビア戦と韓国戦で2連敗中で、悪い流れを変えたい日本は、体調が万全でないMF中村俊輔をベンチに置き、この日ゲームキャプテンを務めた長谷部誠、遠藤保仁、阿部勇樹で中盤を構成。よく集中して積極的な立ち上がりで、前半6分には遠藤の右CKに後方からエリアに入ってきた闘莉王が右足であわせて先制し、良いスタートを切った。

 

 逆三角形の形になる新たな中盤の組み合わせで、日本は前半、FWルーニーらにプレスをかけ、相手の攻撃の芽を摘み、パスをつなぐリズムのあるプレーを展開した。

 だが、この試合の後に大会登録メンバー23人を決めるイングランドは、FWルーニー、MFウォルコット、MFランパードらを中心に、中盤のプレスが甘くなった隙をついては攻めを仕掛け、日本ゴールに迫るようになるが、川島の好セーブと中盤での守備で、1-0リードを守って前半を折り返した。

 

 イングランドは後半からMFジェラード、MFJ・コールらを投入し反撃を開始。特に、日本の中盤の動きが落ちてくると、両サイド、ミドルレンジからの攻めを展開し、再三、日本ゴールを脅かすようになる。

 後半10分にはゴールまで20メートルほどの地点でFKを与え、このセットプレーから繰り出されたジェラードの強打を本田圭佑がペナルティエリア内で手を使って防いでしまい、PKになる。だが、川島が的確な判断で右手をのばしてランパードのPKをブロックしてゴールを守った。

 

 その後も川崎フロンターレGKの好守が光ったが、後半27分には右サイドに展開され、J・コールにクロスを上げられる。これをニアサイドでクリアしようとした闘莉王のヘディングが自陣ゴールに流れて1-1にされた。

 さらに後半38分には同様の形を相手左サイドで作られ、A・コールのクロスはクリアを試みたDF中澤佑二の足に当たって日本ゴールへ吸い込まれた。

 日本は、後半途中からFW森本貴幸やMF松井大輔、FW玉田圭司らを投入して反撃を試みるが、再びイングランドのゴールネットを揺らすことはできなかった。

 

 岡田武史監督は、「攻撃は、前半のうちは中盤で何回かいい形を作れたが、後半になると中盤が少し下がりすぎた。だが、コンディションが上がればもっとできると思う。選手はよく頑張ってくれた。初戦に向けた道筋が見えてきたかと思う。(初戦まで)あと2週間。これでいい感じになれるのではと思っている」とコメントし、この試合でチームの流れを改善する手応えを掴んだ模様。また、「初戦まで2週間になって、いままでのムードや流れを引きずるわけには行かないので」と、長谷部のキャプテン起用の理由を説明した。

 

 だがその一方で、「中盤で十分パスができるところで、前の選手が受けに来なかったり無理やり勝負のパスを出しているところがあった」と指摘。後半2失点場面についても、「クロスの一つ前のプレーへのボール際が甘い。『ここだったら大丈夫だろう』と踏んでいたのだろうが、このレベルでは大丈夫じゃない。そういうのをもっと上げて行かなくてはいけない」と課題を口にした。

 

 チームは試合後に合宿地のスイス・サースフェーへ戻り、31日から練習を再開し、6月4日のコートジボワールとの最後の強化試合を後に南アフリカへ移動する。

 

 

犬飼会長コメント

ワールドカップまであと2週間だがいいところにきている。
選手もふっきれて怖がらずにプレーしていた。
高地トレーニングでしんどいところあれだけ頑張れた。可能性を感じさせる。
闘莉王が出てバックラインがいきいきし、落ち着いてきた。
岡田監督も手応えを感じていた。課題もはっきりした。追いつかれた後どうするか。オランダから勝ち点を取るには、今日と同じではダメ。あと2週間でつめていく。