遠藤保仁は今回、2度目のワールドカップを迎える。2006年ドイツ大会では最終メンバーに名を連ねたものの、一度もピッチに立つことなく終わった。それだけに、今回こそはピッチを踏んで、日本代表チームへ自身のプレーで貢献したいという思いが強い。2009年AFC最優秀選手も受賞したガンバ大阪MFは、日頃は何事にも動ぜず、感情を表に出さないポーカーフェースの持ち主だが、2010年南アフリカ大会開幕を控えて胸に秘めた強い思いを語った。

 

Q:09年6月に予選突破後の代表チームの歩みについて、どう見ていますか?

予選まではどちらかというと、ほとんどホームで試合していたので、アウェーに行ったときにどれだけ自分たちの力が出せるかが、一番のポイントになっていたと僕自身は思っていた。ガーナと南アフリカにはそれなりに日本らしさを出せたと思うので、チーム状態も良い方向に行ったし、岡田さんが考えているサッカーをより精度を上げて行っている中で、手応えも掴んでいました。充実した期間だったと思います。

 

Q:2006年大会ではメンバー登録されながら出場機会がありませんでしたが、そのことで今大会への思いはより強いのではと思うのですが?

ワールドカップに対する思いは小さいときからすごくありました。06年大会はピッチに立ってチームに貢献できるチャンスがありながら、自分で掴み取れなかったので、今回に賭ける思いは強いものがあります。

でも、個人的な感情を表に出すのはよくないので、それは内に秘めて、チームがいい結果を出すために最大限の努力をして、前回はすごく残念な結果に終わっているので、今回はいいパフォーマンスでいい結果を出せるようにしたい。いいワールドカップだなと思える大会にしたいと思っています。

endo02

 

Q:フォア・ザ・チームという姿勢が強いようですが、昔からそういうスタンスですか?

昔からそういう感じですね。鹿実(鹿児島実業)や中学のときもそうでした。チームスポーツではチームあっての自分ですから。それに、サッカーは11人だけでやるものでもないですし、サブやサブにも入れないメンバーがいるのだから、そういう人たちの分も結果を出してあげたい。それは特に高校のときぐらいから強くなりました。

現在のチームは予選を通じてまとまってきた。過酷なアウェーでの試合に勝利したりするとチームというのはグッと盛り上がるところも、みんなで勝ち取ったんだという雰囲気も出てくる。チームにはまとまりがあって、非常にいい方向に向かっていると思うので、これからいろいろと困難なことがあっても、チームが一体感を持って立ち向かっていければと思っています。

 

Q:4年前のチームと今回ではどこが違うのでしょう?

今回が前回と違うのは、このチームはみんなが同じ方向を向いて、誰もが自信を持っている。迷いがないことだと思う。4年前のチームは、ほぼ全部で自由に各自のアイディアに任されてやっていたので、必ずしもみんなが同じ方向に一直線になっていなかった。小さなところですけど、大きな大会になればなるほど、それが大きな差になっていくという気がします。

 

Q:チームの一体感は今回のチームの強みだと?

そうですね。それは大きな強みかなと思います。

 

Q:この4年間の自身と代表チームの変化についてはどう見ていますか?

一番変わったと思うのは、周りからの期待です。間違いなく大きくなっていると思いますし、自分たちの責任感もまったく違うものになっていると思います。プレー面ではよくわからないですけど、常に向上心をもってやっているので、それは続けて行きたいと思っています。

 

Q:代表チームのレベルは上がったという手応えはありますか?

それは非常に感じていますし、選手一人ひとりの意識も間違いなく高くなっていると思いますし、若い選手も岡田さんが就任した当初より、みんな強くなっていると思うので、あとはそれをピッチ上で表現するだけだと思います。

endo03

 

Q:本番へ向けての準備は楽しいですか?

はい。限られた選手しか行けないわけですし、国を代表して行けるので、これ以上名誉なことはない。誰もがワールドカップという舞台に立ちたいと思ってやっていると思う。そういう意味では、プレッシャーも本当に大きいと思いますし、自分たちがやらなきゃいけないという気持ちも強くなると思いますけど、基本的には楽しくサッカーをしないと。

まずは、自分自身との闘いだと思う。上手くいかないことの方が間違いなく多いとは思いますけど、そこで止めてしまったらそれまで。それをまた上手く行くように努力するという作業も大事です。それに、やっている本人が楽しめなければいいサッカーもできないですし、見ている方々も楽しめない。まずはそこからかなと思います。

 

Q:記憶に残っているワールドカップで一番古い大会は?

1990年のイタリア大会ですね。僕が10歳で、一番上の兄が中学校の時でした。テレビやビデオで兄貴と一緒に観たりしていました。そのころが一番サッカーを見る時間が多かった。西ドイツやアルゼンチンの試合はよく見ていましたし、ピクシー(ストイコビッチ=現名古屋監督)がFKを決めた場面とか、何度も見ましたし、(イタリア代表FW)スキラッチがいきなり出てきて得点王になったりして、印象深いのはそれですかね。

 

Q:日本代表選手になってワールドカップへ出たいと思うようになったのはいつ頃からでしょうか?

高校に入ったぐらいから、ワールドカップに出たいなという気持ちはありました。中学の時にはJリーグが始まっていて、サッカーをやってご飯を食べていきたいと思っていたので。2000年のシドニーオリンピックが終わってからは、あと目指すところはフル代表だったので、自然とそうなりました。ワールドカップはサッカー選手として一番の目標。目標を達成したいという気持ちが強いです。

 

Q:本番へ残りの日々をどう過ごしたいと考えていますか?

前回は自分だけのコンディションを考えていればよかったですけど、それだけを考えていればいいということでもないと思うので、チームとしてどう上手く機能していくかを第1に考えて行きたいと思っています。

 

Q:前回大会へ行った経験もあり、チームの中では年長組に入りますが、そういう点で責任感は感じていますか?

そうですね。それは間違いなくありますし、予選の時もそれを非常に感じながらプレーしていました。若手には何でも訊いてほしいと思いますし、僕らは話しやすい雰囲気を作って行くことも大事です。何か気が付いたら声をかける、という感じになっていければいいですね。

 

Q:いつもプレッシャーは感じないと言っていますが、それは今大会でも変わらないと?

どうなんですかね。そこに行ってみないとわからないですけど、基本的にはいつものJリーグや代表の試合で迎えるように(大会本番の試合を)迎えられるのが一番いいと思いますし、平常心で乗り越えてチームのために全力を尽くしていきたいと思っています。

endo04

(取材・文:スポーツジャーナリスト 木ノ原句望)