ワールドカップ・南アフリカ大会決勝のカードが出揃った。7月7日に行われた準決勝第2試合でスペインがドイツに1-0の勝利を収めて、初の決勝進出を決めた。
決勝への意気込みは、元世界王者ドイツとの対戦のいたるところに表れていた。
スペインは立ち上がりから積極的に仕掛け、攻撃サッカーを展開。大会前に足の手術に踏み切って以来、今大会中なかなか本調子に戻らないFWフェルナンドトレスをベンチに置いても、まったく見劣りのしない、厚みのある展開力を見せつけた。
決勝点が生まれたのは後半73分だったが、当然の流れだったと言えるかもしれない。特に、左からのCKに、後方からフリーで走り込んでジャンピングヘッドで合わせたDFカルレス・プジョルの一撃は、彼らの勝利への執念を感じさせる象徴的なゴールだった。
実は前半にも似たような場面があった。その時には、プジョルは右からのクロスに走り込んで頭で合わせたものの、ボールはわずかにバーの上に逸れて、場内からのため息を誘っていた。いずれも場面でもドイツは彼を捕まえることができず、バルセロナDFは同じミスを繰り返すことなく、2度目の試みでは確実に相手のネットを揺らしたのだった。
ドイツは、FWルーカス・ポドルスキが自陣ゴール前まで戻って、身体を張って相手のシュートを防ぐ場面もあり、守備的ながらもファイトする姿勢はあった。
だが、MFトーマス・ミュラーを累積警告で欠いたせいか全体に機動力がない。爆撃機と異名をとった往年のFWゲルト・ミュラーが保持しているワールドカップ得点記録更新に、あと1得点と迫っていたFWミロスラフ・クローゼに、ゴールをお膳立てするまでにも行かない。準々決勝でアルゼンチンを4-0と叩いたチームとは別人のような、守備的なプレーに終始する結果になった。
試合後、ドイツのヨアヒム・レーウ監督は「今大会これまであったような切れがなかった」と体調不足を理由の一つに挙げた。大暴れした感のあるアルゼンチン戦だけでなく、これまでの連戦の疲れが影響したのかもしれない。攻撃力も備えていたチームだっただけに、心残りな試合になった。
一方、決勝に初めて駒を進めたスペインのビセンテ・デルボスケ監督は「守備から攻撃まで、チーム全体がすばらしい試合をした」と選手を絶賛。FWダビド・ビリャも「僕らのベストゲームだ」と口を揃えた。
これまで、個人的な才能では世界トップクラスの選手を多く輩出し、注目を集めてきていながら、ワールドカップのタイトルとは無縁だったスペインだが、ここ数年は個人技にチームとしてのプレーが加わり、組織として強固な姿に変貌してきた。欧州タイトルに次いで世界タイトルも、ついに手にすることができるのか。
「舞台が大きくなるほど、僕らは力を出すようになってきている」と話すビリャ。確かに、グループステージでは、なかなかエンジンがかからない様子だっただけに、バレンシアFWの台詞には説得力を感じる。
スペイン対オランダ。どちらも攻撃力に特長のあるチームだが、いずれのチームも守備の強さも持ち合わせ、全体の完成度は高い。11日のヨハネスブルグ・サッカーシティでの決勝は白熱した一戦になるに違いない。