こうやってお話を伺うと、ザッケローニさんは本当に広い視点、いろいろな角度から、日本のサッカーのことを見たり考えたりしてくれているんですね。ところで、イタリアのサッカー界では、キリンのような企業とコラボしながら、社会に対して何か大きな貢献をしていくというような活動はあるのでしょうか。 |
イタリア代表なら、試合前に、支援が必要な団体や施設の存在を訴える横断幕を持ってアピールするとか、ピンバッジを使って慈善活動のお手伝いをするとか、いろいろありますが、企業と一緒に活動することは私が見聞きする範囲ではないですね。思うに、こういうことが行われている日本を例外的にとらえるべきではないですか。違う分野の人たちが団結して何かをするというのは、ほかではあまり見られないことだと思います。 |
そういう話を聞くと、“ご近所付き合い”から始まったキリングループと日本サッカーの長きにわたる関係というのは、ますます稀有という気がしてきますね。 |
いろいろと理由はあるんでしょうが、やはり日本という国の中でサッカーがものすごく大きく成長した、というのはあると思いますよ。「キリンビール」や「キリンビバレッジ」と聞いて何をイメージしますか、という調査をすると「サッカーを応援している会社」という答えが返ってくるようになりましてね。もちろん「一番搾り」「午後の紅茶」なんて回答もあるのですが、サッカーの成長拡大とともにキリンブランドも社会に深く入っていったのかなと。そこはありがたいと思っています。おそらく、今の日本で日本のアイデンティティーを強く意識させるものは何かと言えば、サッカーが一番じゃないかと思っているんですよ。 |
具体的に形になっていることもあるのですか。 |
ええ。キリンカップのときは新潟、横浜のスタジアムに被災地の小中高校生を対象に希望者を観戦招待しました。被災地の5カ所でパブリックビューイングもしました。キリンビバレッジも日本代表のイメージを利用した商品を投じて、売り上げの一部を被災地支援に回す、ということに取り組んでいます。 |
最初は偶然に近い形で始まりましたが、日本サッカーとキリングループの間に横たわるものは、今はもう「絆」といえるような関係性だと思うのです。我々にとっても貴重な財産といいますか、お金を払って買えるというものではなくなったということです。 |
8月に韓国戦が札幌でありますね。9月のワールドカップ予選をにらんで、スケジュール的にはどんな戦略を立てているんですか。韓国戦で何か試すことはありますか。 |
それは秘密じゃないの(笑)。 |
大丈夫ですよ、ご心配なく(笑)。韓国戦はワールドカップ予選に向けた最終チェックの場になります。そこで何かを大きく試す、変えるつもりはありません。相手は韓国ですから、フレンドリーマッチといっても真剣勝負になるでしょう。韓国もアジアカップの悔しい負けがあるので燃えてくるでしょう。 |
今日は本当に素敵な話をたくさん聞かせていただいてありがとうございます。本当に日本のことを愛してくださって、いろいろな視点から考えて、日本を強くしようとしてくれていることが分かりました。ザッケローニ監督は本当にサッカーがお好きなんだなあということも分かりました。最後の質問になるのですが、監督は、この仕事の一番の面白みは何だとお思いですか。 |
楽しみというか、日本代表の監督であるということは、サッカーにかかわるすべての人…いや、日本人全員の監督だ、くらいの気概を持って仕事をしています。スタジアムに足を運ぶ人もテレビで見る人も含めて、みんなの代表監督だと思っています。 当然、責任の重さも十分に自覚しています。私は自分のことを志の高い人間だと思っています。キリングループも成長を遂げている企業。お互いがアイデアを持ち寄って、より高い目標を一緒に目指していければと思っています。キリングループさんには引き続き、日本サッカーをサポートしていただければと思っております。 |
もちろん、日本サッカーの輪がますます広がっていくように応援していきます。 |
ザッケローニ監督は日の丸を背負って戦いたいと願っている選手たちのリーダーにふさわしい人だということを本当に実感しました。 |
グラッツィエ(ありがとう)。 |