試合当日の朝食会場に現れたザッケローニ監督は、
「おはよう。みんな大丈夫か」と、笑顔でチームスタッフに声をかけた。
安定感ある余裕を感じさせる名将。
決勝戦を前にしても、いつもと変わらぬ1日のスタートを切った。
アジアカップのような短期の大会では、どこにピークを持っていくかが、非常に重要な要素。
そして、各国の指揮官たちがそれぞれの哲学でチームを作り上げ、決勝戦までのシナリオ考えていく。
前日の会見でザッケローニ監督は、今大会を欧州チャンピオンズリーグと照らし合わせた上で、
「チャンピオンズリーグなどの経験があるから落ち着いていられる。
それがチームに伝わっている」と語った。
考えてみれば決勝までの道のりは、とても平たんと言えるものではなかった。
退場者を出し10人になる試合、先制された後の逆転劇、死闘の末のPK戦など
数々の劣勢や逆境を跳ね返してきた。
今までのサムライブルーにない、冷静さや粘り強さが備わってきたように思える。
それはザッケローニ監督が、早くもチームに浸透させたチームカラーと言えるだろう。
「監督という仕事には経験が必要。
今まで(クラブ)とは違う日本代表での良い経験は宝物だ」。
円熟期を迎えるザッケローニ監督の言葉には重みがあった。
そして、そのイタリア人指揮官が「キャプテンの資質を全て兼ね添える」という、
長谷部が大会中に言った忘れられない言葉がある。
「日本人であることに誇りを持って戦いたい」。
現地時間の夕方6時にキックオフされる決勝戦。
各国の記者の予想は、日本か、オーストラリアか、真っ二つに割れている。
結果がどうなるのか、そんなことは意識せず、今はいつも通りスタッフとして
誇りを持ってチームを支えていくことに集中するばかりだ。
(日本代表チームスタッフ)