6月25日 フラッグ再起動!買い出し編
昨日の勝利の余韻に浸る間もなく、マッチフラッグリーダーとしてはやらなくてはならないことがある。それは次なる対戦相手とのマッチフラッグの制作である。
試合がある29日までの残された4日間の間にパラグアイ戦の旗を作るぞ!ということでまずは素材の生地を手に入れなくてはならない。グループリーグでの3戦は日本で2ヶ月間かけて12の都市でのべ2,000人の人たちの協力のもと古着を使って制作してきたが。決勝トーナメントのマッチフラッグは限られた時間内で作らなくてはならないので、生地屋さんに行って必要な色の布地を仕入れることにした。
ホテルの人に聞いて車でショッピングモールまで出かける。考えてみればホテルのあるセンチュリオンという地区の街にはこれまで出たことがなかった。ぶらりと近所を歩くことはホテルの周りのレストランとかがある地域に限られており、そのあたりがこの大会の少々物足りない点である。
車で10分位のところには日本でいえば郊外型の車でかけつける巨大ショッピングセンターがあり、大きな駐車場がある。日本と似ているが違う点と言えば、広大な駐車場が舗装されておらず、土ぼこりが舞っているというあたりであろうか。
生地屋さんには充分な品ぞろえがあり、値段もそこそこ安い。150センチ幅のコットンの白い生地が1メートルあたり350ランド(400円)である。店員さんとワールドカップの試合で応援するフラッグを作る話をすると「AYOBA!」と声が上がった。英語でいうところの「COOL!」日本語で言う所の「カッコイイ!」というところであろうか。このAYOBAはワールドカップの音楽の中で、掛け声としてよく耳にする言葉である。それと「KE NA KO」(キー ナーコー)というのもサウンドロゴ的に試合中継のテレビでよく聞く言葉である。これは「ついにその時が来た!」という意味である。
そんな話をしながら、白・赤・青・黄・緑・黒の生地を購入する。パラグアイの旗はオランダと同じ横の三色旗にまん中の白地のところにエンブレムがある。店先にワールドカップ出場の32カ国の旗が飾ってあって、細かいところまで確認できて丁度たすかりました。買い物には初戦からマッチフラッグを手伝ってくれている人も一緒につきあってもらって、これから作りますよ!と気合いを入れる。
ホテルでは帰国の途に就くサポーターたちが空港行きのバスに乗り込んでいった。あとは日本で応援します。もっと南アフリカにいたいけれど後はまかせました。デンマーク戦を目撃できた満足感と、まだこの先にもっとすごい出来事が待っているのに・・・という気持ちが相まっているようである。しかしトランクには大きな土産話しを故郷に持って帰ることが出来る喜びが詰まっている。
ロビーではデンマーク戦のマッチフラッグの補修作業がサポーターによって行われていた。喜びをフラッグに伝えた分だけつなぎ目あたりが破れているところがある。マッチフラッグの役割としては、試合が始まるまでの期待感を形にすること、そして試合中にスタンドで掲げること、そしてもうひとつ、その日のことをいつまでも思いだせる装置になることである。日本に持ち帰り、2010年6月24日JAPAN・DENMARKと記されたこのマッチフラッグを見れば昨日のことが、それぞれが過ごした空気感を再現できるのである。時間は前にしか進まないが、人間の想像力があれば時間は過去にも未来にも行けるのである。補修している人たちも、そのほころびを糸で縫いながら、いつまでもこの時のことを忘れないということを自分の記憶にも同時に縫い付けているのであろう。
(文責:日比野克彦)
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