SAMURAI BLUE サッカー日本代表

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[ 10.07.02 20:48 ]マッチフラッグタイムス Vol.21 アフリカ、落日、大気圏

hibino

7月2日 アフリカ、落日、大気圏

 ホテルの片隅には、いつも西鉄さんのオフィスと化していた一角がある。 試合のチケットの手配、航空券の変更、オプションツアーの申し込みなどなど、日本サポーターにとっては、心強い場所であった。多い時で5 人程いたスタッフも、今日帰国する松本さんで最後である。誰もいなくなった、元西鉄旅行社出張所には、かわりにサポーターたちが置いていった食材が山積みになっている。最後に残ったわたし達も、昨晩多少減らしたのだか、到底追いつかず、ホテルマンたちへあげることにした。
 人が生活していくには物がいる。日本チームの食材はどうしたのだろうか? まあ規模は違うが、似た様なことになっているだろう。

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 地元の新聞には、岡田監督がヨハネスブルグ空港から帰国する様子やこれまでのベストゴールで本田と遠藤が選ばれていたりとか、ワールドカップはまだ終わっていないのに、やはり日本が残っているのといないとでは全く別のワールドカップである。

 

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 ホテルのロビーで日本のメディアの人と話をした中で「これからは、もうひとつのワールドカップに集中して取材できます」という言い方があった。自国の取材をするのと、他国の取材をするという二つの取材は別物であるということであろう。わかるような気がするが、その取材があたりまえのように一つになった時が文化としてのサッカーの取材が出来る時のような気がする。
 松本、カルロス、私の三人で空港に向かう。白いテントが見える。それがFIFAターミナルなるものであると松本さんが教えてくれた。これはワールドカップ開催中の暫定的な建物で、チームはここを使って出入国をしているという。昨日日本チームもここから出国していった。チーム専用のパスポートコントロールでスムーズに搭乗できる反面、中には免税店的なものは何もなく、土産も買いたくても買えないらしい。
 商魂たくましいFIFAならば、参加32カ国チーム専用OFFICIAL SHOPをここに作っていれば、選手・コーチたちはスタジアムで買えなかった分(当然その気分ではない)それぞれがワールドカップを終えて、気兼ねなく買えたのに、そうとうみんな大人買いして儲かったかも。

 

 3人は普通のターミナルなので、適当にランドが余らないように土産も買えました。みな航空会社がばらばらだ。私はバンコク経由のタイ航空で帰国する。帰る先は一緒でも、飛行機が違うから、みんなとヨハネスブルク空港で別れる。ここは南アフリカだけど、搭乗したらもうそこは日本である。搭乗口でジョージでマッチフラッグを手伝ってくれたTBSのクルーと会う。お疲れさまでした。バラグアイ戦の視聴率は64%(※1)でした。と日本の盛り上りを教えてくれた。搭乗ゲート脇にもショップがあり、アフリカのお面とか、

 

アンティークの品々が売っている。今年の三月にカメルーンにNHKの取材に行った時に買ったのと同じキャラクターの王様の能力を表現しているゾウのお面があった。その横に初めて見るビーズで出来た祭事用の帽子のアンティークがある。ちょっと気になるが、時間もないので何も買わずに搭乗口に行くと、出発が遅れているようだ。ならば、と戻ってひとつ祭事の帽子を買ってしまった。よくやるパターンである。

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 窓の外には南アフリカの海岸線が見えた。このアフリカの大地で人類は生まれ、100万年かけて地球上を移動し、世界各地に文化を築いてきた。そしてそれぞれの地域でのサッカーという表現を持って再びこのアフリカの地に集まってきた。このアフリカに来ることが出来てほんとうに良かった。世界中の人がアフリカに集うそのタイミングに帰ってくることが出来て幸せだった。アフリカの空はサムライブルーに光っていた。

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 機内ではワールドカップ特集番組が放送されていた。各グループリーグの戦いぶりが編集されている。その中に日本対デンマーク戦の様子が流れ、応援席が映った時にマッチフラッグがしっかりとその背景に映っていた。この機内に積み込んであるマッチフラッグがワールドカップの記憶としてしっかり記録されていた。自分たちが南アフリカに来なければ、その映像は当然なかった。時間というものが織りなす不思議な体験であった。ひとつひとつの行為が形になっていくということは、不可視な時間の中で生きている自分自身の存在を確認することとしても重要なことである。

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 窓の外の光が段々と赤くなってきた。夕焼けである。飛行機の位置を知らせる案内を見ると、マダガスカル島上空である。

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 10年ほど前にしたマダガスカルの旅を思い出す。「星の王子様」にも出てくるマダガスカルの西部にあるバオバブの林に行った時のことであった、その日の夕焼けは凄かった。西の空から赤くなり、段々とその面積が広がり、ついには東の空まで赤くなった。それはモザンビーク海峡を挟んで西にあるアフリカ大陸の影響だとマダガスカルの人が言っていた。そのことを思い出し東の空をも見てみたらほんとに東の空のほうまで赤くなっている。地球上の大陸は最初は一つであった。パンゲアと呼ばれる大陸移動の中心はこの真下のマダガスカルである。

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この地点を中心に大陸は移動していったのである。だからここの夕焼けは360度なのだろうか?機上での太古に馳せる浪漫的な想いである。
 宇宙につながる大気圏はみるみるうちにその色を変えていった。漆黒の夜空に星が一つ見えた。華やかな舞台であるワールドカップはまだ世間の注目を浴びながら、あの光のもと南アフリカの地で開催されている。しかし既に今日現在でベスト8を残す、それ以外の24の国はその光を浴びる舞台からワールドカップ大気圏外へと光の元から去っていった。しかし光輝の中では見えなかったその価値が夜空に見える星のように、しっかりと星の声を24のサポーター達は見続けていることであろう。

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※1)
のちの調べでは平均57.3%、瞬間最高64.9%でした。

(文責:日比野克彦)

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 Vol.3 [6月14日 カメルーン戦観戦記] 
 Vol.4 [6月15日 ヨハネスブルグからジョージに空路移動] 
 Vol.5 [6月16日 ジョージ] 
 Vol.6 [6月17日 3戦分がそろい踏み 快晴のジョージに翻るマッチフラッグ] 
 Vol.7 [6月18日 ジョージからダーバンへ] 
 Vol.8 [6月19日 ダーバン オランダ代表] 
 Vol.9 [6月20日 サッカーシティ観戦記] 
 Vol.10 [6月21日 ヨハネスブルグ スペイン-ホンジュラス観戦記] 
 Vol.11 [6月22日 20年前の記憶を辿り、アパルトヘイト時代の黒人居住区を訪ねる] 
 Vol.12 [6月23日 デンマーク戦前日ワークショップ] 
 Vol.13 [6月24日 ルステンブルグへ、デンマーク戦いざ] 
 Vol.14 [6月25日 フラッグ再起動!買い出し編] 
 Vol.15 [6月26日 新たな気持ちでパラグアイとのマッチフラッグを制作] 
 Vol.16 [6月27日 ケーナーコー(ついにその時が来た!)] 
 Vol.17 [6月28日 太宰府で制作したマッチフラッグが到着] 
 Vol.18 [6月29日 明日へ] 
 Vol.19 [6月30日 楽日は次につながる初日である] 
 Vol.20 [7月30日 ブブゼラの音は風に乗って] 

 

日比野克彦

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